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番外編②~忘却のレーテ 解説編~ [忘却のレーテ]


忘却のレーテの紹介・解説編

この記事はネタバレ前提で法条遥著の忘却のレーテを紹介、解説する記事です。

前回のネタバレなしの記事はこちらから。

本作を読んだことのない方はぜひ前の記事をお読みになり、本作を読んでからこの記事をご覧ください。




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まず読んでいくうちに「おかしいなー…」と思った点を挙げてみます。



・エピローグから始まる

・そのエピローグで不合格になったはずなのに第1章で普通に実験している

・第1章の最後に「実験は終わりました」と言っているのに第2章でも実験が続いている

・章を進めていくにつれて登場人物が増えていく

・「死」という言葉に異常な反応を見せる主人公が殺し屋と共に行動している




個人的にはこんなところでした。



この記事をご覧になっているということはすでに小説を読み終えたと判断していますのでネタバレ全開で進めていきます。



この忘却のレーテのトリックはただ1つ


時間の流れが逆になっている


ということだけです。



少し誤解を招く表現なので具体的に説明すると、ステュクスという実験施設内において被験者は11月1日から7日まで過ごすことになるのですが

1日→7日

2日→6日

3日→5日

4日→4日

5日→3日

6日→2日

7日→1日

(左が現実の日付 右がステュクス内で表示される日付)

と被験者に認識させていることからステュクス内の時間の流れは逆になっているという表現をしました。

簡単に説明すると、読者と主人公は1日から順に7日まで過ごしたと思っていますが、現実にはステュクス内の1日の時点ですでに6日過ごして最終日を迎えており、7日の最終日だと思っていた日が実は初日だったということです。



章は現実の7日から1日に向かって進んでいるため、現実の1日から殺し続けてきた人達がどんどん生き返っていくことになり、混乱してしまいます。

それがこの作品の最も不気味な点です。

レーテを投与することで前日の出来事がリセットされるので、読者にとっても前日との違和感があったとしても「レーテが投与されたから関係ないか…」と考えがちになってしまいます。



本来の物語の進め方というのは、これから~をします、とレールを敷いて明かりを照らしながら進んでいくため、今何をしている場面なのかというものがわかりやすいと思います。

しかし、本作はレールを敷かずに進んでいくため、真っ暗なトンネルの中を無闇に進んでいくイメージです。

そして最後に明かりをともし、今までこのような道を進んできたのです、というネタ明かしをします。

一般的な物語の進め方さえも覆すようなメタ的な構成をしております。



この実験の本当の目的はレーテは本当に効果があるのかどうかというものではなく、レーテによって死というものを本当に忘れられるかどうかという実験でした。

そのため登場人物のひとりである殺し屋・二階南にはレーテは投与されておらず、現実の1日から7日まで毎日主人公である笹木唯に対して人が死ぬところを見せ、レーテを投与するという実験を行いました。

この実験の本当の目的は小野寺エリス博士にとっての目的です。

博士の昔のトラウマを忘れる、そのためだけにレーテを開発して被験者を殺し、笹木唯の実験結果から忘れることができるという結論を出して最後に自分自身に投与します。

そして博士には笹木唯に対して死を麻痺させるという別の目的もありました。

毎日定期的に死を見せ続けることで死に対する恐怖を麻痺させ、慣れさせることで完璧に死の拒絶から解放させることができました

それを証拠付けるのが最初のエピローグです。

二階南の突然出た死という言葉に対しても拒絶することなく、死という言葉さえも忘れてしまっています

このことから博士の実験は成功であったといえます。




以上の説明で最初に私が挙げた「おかしいなー…」と思った点は説明がつくと思います。

最後に個人的なお願いというか要望を述べてこの番外編は終わりにします。




法条遥さんの作品の映画化第2弾は忘却のレーテでお願いします




説明を付け加えると、個人的にはリライトを映像化して欲しいのですが、叙述トリック的に難しいと思うんです。

章ごとに一人称が変わりますし。


しかしこの忘却のレーテなら映像化できるトリックだと思うのです。

さらに人間の記憶は文章よりも映像のほうが焼きつきやすいと思う点から前日との対比がしやすく、小説よりももっと強烈な違和感を味わえると考えます。

バイロケーションをあんなにも上手く映像化できていたのでいけると思います。



ぜひとも映画化して欲しいですね、忘却のレーテ。

バイロケーションについてもいつか番外編で紹介したいと思っています。



次回からはリアクトに入ります。













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